国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

国内連帯を活用した「セーブ・アンド・グロウ」農業モデル推進事業 交流プログラムを実施 (報告)

2018/08/13 - 2018/08/17

国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所が2013年10月より実施している「国内連帯を活用した『セーブ・アンド・グロウ』農業モデル推進事業」の一環として、ガーナとケニアから実務者を招き、8月13日~8月17日の5日間の日程で交流プログラムを実施しました。

本事業は日本の農林水産省の支援を受けており、飢餓や栄養不良の解消に取り組む国内連帯組織(NAAHM)の日本とアフリカ諸国とのパートナーシップを高めることで、開発途上国における農業生産の成長を助け、世界から飢餓をなくし、食料安全保障を達成することへの貢献を目指しています。

2014年の第一回から始まり今年で4回目となる交流プログラムには、政府関係者、研究者、FAO現地職員の計7名(ガーナから3名、ケニアから4名)が参加し、持続可能な農業やサプライチェーン管理の実践現場などを視察し、情報・意見交換を行いました。

初日の8月13日には、東京の国連大学にて公開セミナー「持続可能な農業に向けて:ガーナにおけるカカオ生産の現状と未来」が開催され、日本のNAAHMメンバーや食料安全保障・栄養の課題に取り組む人々との交流の機会が設けられました。

14日から15日にかけては、日本の世界農業遺産(以下、GIAHS)認定地である新潟県佐渡市を訪問しました。佐渡市は「トキと共生する佐渡の里山」として2011年に日本で始めてGIAHSに認定されています。参加者は2日間を通して、棚田や農園、トキの野生復帰に関連する施設、田んぼアートなどを訪れ、生物多様性と景観の保全、またトキを育む島の実現への取り組みについて、農家や組合、行政の方々から直接お話を伺いました。参加者からは、「生産量を上げることは生物を犠牲にして行うことではないということを学んだ」、「経済利益だけではなく、自然環境そして将来への配慮のある農業生産活動の取り組みは、日本から自国に持ち帰ることのできる重要な教訓だ」という感想が聞かれました。 

16日には「静岡の茶草場農法」としてGIAHSの認定を受けている静岡県菊川市、島田市、掛川市を訪れました。棚田と生態系の保全活動に取り組む非営利団体、お茶の博物館、お茶生産工場などを視察訪問し、茶草場農法や生態系の保全、お茶のブランド化などについてお話を伺いました。お茶の生産国であるケニアの参加者は、「環境や生態系を保全する持続可能な茶栽培の農法を学ぶことができ、ぜひ自国でも導入したい」と話していました。

 

プログラム最終日の17日には、埼玉県・坂戸にある株式会社明治の工場を見学し、カカオ豆の調達や品質管理を含む商品の生産工程についての説明を受けました。生産現場の見学後には質疑応答の時間が設けられ、参加者からは製造過程のトレーサビリティや品質保証、栄養の観点などについて質問があり、情報共有と意見交換が行われました。

プログラムの最終セッションとして設けられた参加者の間での議論の場では、5日間の学びをお互いに共有すると共に、プログラムを通して得た教訓や経験を自国でどのように活かすことができるのか、という話し合いがなされました。参加者は、伝統的な農法が社会で認められ、継承されている佐渡や静岡の実践のように、ガーナやケニアにおいても社会的・経済的利益のある在来種の作物や伝統的で持続的な農業技術や知識を特定し、それらに基づき持続可能性を追求するなどのアイデアを出し合いました。また、生産者が積極的に研究活動や知識の普及、生産工場の設立などに従事していることに強い印象を受けた参加者は、自国の農家に対して、専門的知識の習得や組合としての農家の組織化、政策決定過程への参画をさらに促進することができる、との認識を共有しました。