国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

日本政府が口蹄疫対策及び連邦直轄部族地域(FATA)の生計回復に770万USドルを支援

2018/02/27

イスラマバード-日本政府は今日、FAOが実施していく2つのプロジェクト、口蹄疫対策の向上及び第2フェーズとなる連邦直轄部族地域(FATA)における生計回復に対し、それぞれ270万USドルと500万USドルを拠出すると発表しました。

倉井高志駐パキスタン日本国大使とミナ・ダゥラッチャイFAOパキスタン事務所長は、国家食料安全保障・調査省のシカンダー・ハヤット・ハーン・ボサン連邦大臣が同席する中、書簡の署名、交換が行われました。プロジェクト実施の詳細が記された贈与契約は、同式典において、東城康裕JICAパキスタン事務所長とダゥラッチャイFAOパキスタン事務所長との間で署名、交換されました。

口蹄疫はひづめの割れた動物の病気で非常に感染しやすく、小規模農家の食料安全保障や生計に打撃を与え、家畜セクターによる経済力向上を妨げます。牛乳の生産は50~70%低下する恐れがあるほか、子牛の死亡率は10~22%に上ります。もしこうした損失を家畜頭数に加えてみると、その影響は年間何億ドルにも及びます。本プロジェクトは、口蹄疫発生の監視や疫病対策における早期対応メカニズムを大幅に改善させ、パキスタンでの口蹄疫発生数を減少させます。これにより、疫病によって生じる損失削減と食料安全保障に寄与する家畜生産性向上につながり、畜産農家の生計の家畜疫病の脅威に対するレジリエンスが向上します。

FATAは、過去10年にわたって暴動や軍事作戦による深刻な影響を受けてきました。2015年、日本はプロジェクトの第1フェーズとして、500万USドルを拠出し、FAOは約7万7,000世帯に対して食料安全保障と生計の改善につながる農業生産の再開を支援、成功裏に実施しました。同プロジェクトの第2フェーズでは、日本政府はFAOを通して、FATAのクラム及びハイバル管区の約3万2000世帯を対象に支援を行います。

プロジェクトは同地域にて、農業開発を通じ、貧困削減や経済機会の推進を支援していきます。農業開発は同地域の安定化と経済成長にもつながります。今回のプロジェクトはFATAの事務局により開始され、国連機関や日本を含むドナー国と連携して実施されている「持続的な帰還と復興計画」に対応するものです。

国家食料安全保障・調査省のシカンダー・ハヤット・ハーン・ボサン連邦大臣は、式典で、「パキスタン政府は、農業を社会のすべての人々の食料安全保障を確立するための重点分野の1つと考えています。拡大する農業セクターは国の経済を後押しするだけでなく、貧困削減や、食料へのアクセス改善においても不可欠な役割を果たしています。栄養改善に向けて、改良された高価値園芸に重点を置いた農業、畜産、漁業の多様性が、新たな「農業と食料安全保障政策」を進める上で、大きな推進力となります。」と述べました。

倉井高志駐パキスタン日本国大使は、「農業セクターはパキスタンの経済に不可欠な要素であり、農業セクターの安定した成長は、パキスタンが全般的に発展を遂げる上での1つの必要要件となります。今回の2つのプロジェクトが、農産物の生産向上に寄与するばかりでなく、パキスタンの社会経済の発展にも貢献すると信じています。」と話しました。

東城康裕JICAパキスタン事務所長は、「このプロジェクトは地域の安定化に大きく貢献し、またFATAでの商業農業を推進するため、アグリビジネスやバリューチェーンの開発にも本質的に焦点を置いています。さらに、特に養鶏、家庭菜園、食料と穀物の貯蔵や保存など、さまざまな介入において女性の参加を促しています。」と述べました。

ミナ・ダゥラッチャイFAOパキスタン事務所長は、日本政府の資金提供に感謝するとともに、「2つのプロジェクトはFATAの移行計画(FATA Transition Plan)における重要な介入分野に対応するものです。これらの介入はFATA地域の食料安全保障の改善、経済活動と市場の促進によりFATA地域の農業セクターの発展に寄与し、その結果、地域の平和や安定の実現につながるでしょう。口蹄疫プロジェクトは、“ワンヘルス”アジェンダの一環として家畜の健康の重要性を強調しており、食料不安への対処や、栄養改善、家畜に頼った農村部の生活改善にとって非常に重要です。」と述べました。