国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

FAO食料・農業植物遺伝資源条約事務局長ケント・ンナドジィが初来日、都内の講演で植物遺伝資源の重要性を強調

2018/06/14

横浜 - 国連食糧農業機関(FAO)本部ローマより食料・農業植物遺伝資源条約の事務局長ケント・ンナドジィが6月10日、初めて来日しました。4日間の滞在中、谷合正明農林水産副大臣を表敬訪問したほか、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)や種苗の民間企業を訪れ、情報提供や意見交換を行いました。また、都内で開催された国際セミナーに出席し、食料安全保障と植物遺伝資源の多様性について講演しました。

6月13日に農林水産省とFAO駐日連絡事務所が共催した国際セミナー「気候変動対応等における植物遺伝資源をめぐる国際状況」にて、ンナドジィ事務局長は基調講演を行い、植物遺伝資源の多様性が失われることで農業生産の質の低下や収量減少を招き、その結果、食料・栄養不足など人々の健康に悪影響を与える、と食料安全保障の観点からその重要性を説明しました。植物遺伝資源の保全と利用においては、各国が相互依存しており、すべての国の共通の関心事であることから、2004年に発効した「食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(International Treaty on Plant Genetic Resources for Food and Agriculture: ITPGRFA)」では、多数国間制度を設立し、植物遺伝資源の利用から生じる利益を公正かつ衡平に配分することを定めています。今日、気候変動や土壌劣化などが収量増加の足かせとなる中、植物遺伝資源の多様性を維持していくためには、保全、入手、利用において、国際的な枠組みの下に各国が協力し、支援することが重要と述べました。

このほか、企業(種苗会社)や研究機関への訪問では、主に、条約の多数国間制度のあり方や今後の改善等について意見交換した後、活発な質疑応答が行われました。多数国間制度の改善は、今後、海外の植物遺伝資源の取得に影響を及ぼすことから、日本の関係者はンナドジィ事務局長による説明や情報提供に高い関心を示しました。同時に、事務局長は、日本の植物遺伝資源の保全や利用に係る最新技術を評価した上で、その共有・移転を通じた開発途上国への支援に期待を寄せました。

最終日、ンナドジィ事務局長は、農林水産省の谷合正明副大臣を表敬訪問し、当条約が、植物遺伝資源の保全と持続可能な利用、並びにその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分に重要な役割を果たしていることを再確認しました。加えて、当条約が持続可能な農業生産に寄与することから、SDGs(持続可能な開発目標)達成にも貢献することを改めて確認しました。谷合副大臣は、当条約の多国間制度の改善に向け、日本が、引き続き、政治・財政的貢献を果たしていく旨述べました。

 

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