国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

トルコでシリア難民の就労支援 日本政府の協力で実現

2019/01/25

FAO主催の就労支援フェアが2018年12月4日、トルコ・シャンルウルファ市であり、シリア難民と受け入れ地域住民計250人が宮島昭夫駐トルコ大使から修了証を受け取りました。

この修了式は、日本政府が50万米ドル(日本円で約5540万円)を拠出するプロジェクト「シリア難民・難民受入れコミュニティの生計向上機会及び社会的結束の強化を通じた強靭性の構築」の一環として、参加者の研修修了を祝うために開かれました。このプロジェクトは、シリア難民とその受け入れ先のコミュニティとの結びつきを強め、生計向上を促進することを目的としています。

就労支援フェアには、トルコ農業・森林省ア−メット・ヴォルカン・ガンゴレンEU局次長代理、FAOトルコ事務所所長兼中央アジア地域コーディネーターのヴィオレル・グトゥが出席しました。

8年近くに及ぶ紛争を経て、トルコは350万人以上のシリア難民を受け入れています。その多くは正規雇用の仕事や定期収入がなく、人道支援をよりどころにしています。このプロジェクトは農業スキルの向上を通して、人道支援への依存から自立した生計への移行を支援することを目的としています。

宮島昭夫駐トルコ大使は「私たちがこのプロジェクトを支援するのは、自立のために重要となる新しい職や収入源の機会を参加者に提供するからです」と述べ、「新しい仕事に就いたシリアの人々はより積極的に地域経済と社会に参加できるようになります。このことこそが地域コミュニティの社会的結束を育みます」と力を込めました。

キリスでの養蜂研修に参加した難民の1人、シリア出身のマイサ・ダースさん(32)は「養蜂やハチミツの抽出方法を知ることができ、たいへん有益な研修となっています。将来は養蜂ビジネスを起業しようと思っています」と語り、「技術面での学びに加えて、シリアとトルコ双方のコミュニティの人々と知り合うことができ、この研修に非常に満足しています。養蜂についての新たな情報を学びながら、共に充実した時間を過ごしています」と続けました。

シャンルウルファ市では、25人の女性が市営の調理施設で研修を受け、市営の売店で販売する栄養ある健康的な食事の調理法を学びました。この都心部の売店では補助金を受けた食品を販売しています。調理場でトルコの伝統料理を調理する仕事をしているラガドさん(19)は「この研修はシリア難民、特に女性にとってとてもためになります」と話します。

「トルコ語での会話や調理場を衛生的に保つための基礎的な知識を学んでいます。ここで4週間にわたって、シャンウルファの名物とされるトルコ料理の作り方を学ぶのです」。ラガドさんは「研修修了後は、私のコミュニティや脆弱な立場にある他のシリア難民の力になりたいと思っています。彼らが直面している困難を知っているからです」と続けました。

FAOトルコ事務所代表補佐のアイセグル・セルシクは、プロジェクト実施パートナー企業のベルチュールを最近訪問し、経済的機会と雇用創出の促進のためにより統合的な支援が必要だと強調しました。

このプロジェクトでは、日本の非政府組織(NGO)「AAR Japan 難民を助ける会」とのパートナーシップのもと、低栄養や慢性疾患予防に向けた健康的な食事や栄養についての意識を高める研修も実施し、脆弱な人々の知識を高め、実践を促すことも目的としています。

FAO食料安全保障オフィサーの小原啓吾は「栄養や健康、コミュニケーションや社会的支援へのアクセスなど、自立した生計を実現するために重要なライフスキルはこのプロジェクトの主要な構成要素の1つです」と話します。このFAO主導のプロジェクトによってシリアでの紛争による被害を受けた人々のために持続可能な生計の手段をトルコで創出できるよう、FAOは民間セクターの参画についても促進しています。

原文プレスリリースはこちらから(英語)

http://www.fao.org/emergencies/fao-in-action/stories/stories-detail/en/c/1174822/