国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

日本政府、ガーナで持続可能なカカオ生産を支援 遷移型・多様化アグロフォレストリーを通して

2019/07/22

アクラ―国際連合食糧農業機関(FAO)は日本政府の支援を受け、鉱物採掘により劣化したカカオ農地の再生に向けてガーナを支援する事業を開始しました。

違法な小規模採掘(ガーナでは”Galamsey”と呼ばれる)は、カカオ農地の破壊、森林被覆の消失、土地や水質汚染、生物多様性の喪失を引き起こしています。この状況はカカオ生産地で特に悪化しており、カカオ農地の広大な地面の破壊によって、小規模カカオ農家の生計手段が失われています。

日本政府による80万米ドル(約8626万円)の拠出を受けるFAO事業「ガーナにおける違法採掘により悪化した環境と小規模農家の生計の回復及び気候レジリエンスと食料安全保障の向上―遷移型・多様化アグロフォレストリーによる持続可能なカカオ生産を通して」は、森林と生物多様性の回復、カカオを基盤としたアグロフォレストリーの促進と気候変動の影響の緩和、小規模カカオ農家の持続可能な生計向上を支援します。

ガーナは世界第2のカカオ生産国・輸出国であり、コートジボワールと合わせると世界のカカオの約70%を生産しています。ガーナのカカオ産業は約80万の家族農家を支えており、彼らの現金収入の半分以上を占めます。したがって、カカオ産業はこの地域の食料安全保障と栄養にとって不可欠です。ガーナココアボード(COCOBOD)によると、カカオは年間約20億米ドル(約2156億4000万円)規模の外国為替取引を創出し、同時にガーナの国家歳入と国内総生産(GDP)に大きく寄与しています。

COCOBODの予備調査によると、違法採掘は少なくとも1万6468.51ヘクタールのカカオ農地の劣化、小規模農家8万4635人の生計に影響を与え、年間2700万米ドル(約29億円)に相当するカカオ豆の損失を招いています。

また、持続可能ではない農業手法、カカオ樹木の高齢化、低い土壌肥沃度によってカカオ生産性が低下しています。さらに、世界的な気候変動の農業への影響、特にガーナのカカオ生産への被害は軽視できません。カカオは気候の変動性に対して最も脆弱な作物のひとつとされています。

ガーナの平均気温は2050年までに2度上昇するとも推定されており、カカオの蒸発散と乾燥ストレスの増大により、カカオ生産に適する農地が現在の作付面積の約5分の1に減少すると予測されています。気温上昇、乾期の長期化、予測不可能で不規則な降雨分布はカカオ生産に大きな影響を及ぼします。

FAO事務局長補兼アフリカ地域事務所代表アベベ・ハイル・ガブリエルは、FAOがガーナ大学とおはようガーナ基金と連携し、SAFTA (注:Sistema Agroflorestal de Tomé-Açu または Tomé-Açu Agroforestry System、アマゾン地域の日系ブラジル人によって開発されたアグロフォレストリー農法・技術のこと) を試験的に実施し、普及を進めていることを伝えました。

またガブリエル代表は、SAFTA技術はブラジルのアマゾン地域で1ヘクタール当たり800キログラム以上の生産増を達成し、カカオの生産性向上に有効であることが証明されたと述べました。この事業は日本政府の支援のもと、ガーナ大学とおはようガーナ基金、ガーナ・カカオ研究所と連携して行われます。このプロジェクトでは、鉱物採掘により劣化したカカオ農地をカカオのアグロフォレストリーとして再生すること、違法採掘により被害を受けた小規模農家の生計の回復、そしてSAFTAを用いた持続可能なカカオ生産の促進を目指しています。

姫野勉・駐ガーナ日本大使は、政府、開発パートナー、研究・学術機関、民間セクター、市民社会、農民組織など、関係者間の協働と連携、そしてよりよい調整が、事業の成功を導くためには重要であると強調しました。

 

FAOと日本政府のパートナーシップ

日本政府は過去数十年にわたって、FAOの最重要パートナー国のひとつであり、食料安全保障の確立と自然資源の持続可能な利用の促進を進めてきました。

FAOの通常予算に対する日本の分担金は世界第2位、任意拠出金においても多大の貢献をしており、FAOが手がける現在進行中の2500の現地プログラムを支える上位協力国のひとつでもあります。

日本の有する専門技術や人材は、FAOの取り組む持続可能な農林水産業の開発においてきわめて重要といえます。

 

原文プレスリリースはこちらから(英語)

http://www.fao.org/ghana/news/detail-events/en/c/1199063/