国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

日本の支援受け、イエメンで農業生産能力の回復事業

2019/07/31

日本政府とイエメン農業・灌漑省、国連食糧農業機関(FAO)は共同で、内戦下にあるイエメンの農家に種子を届けています。これらの種子は、最も脆弱な家庭がこの農期に有利なスタートを切れるよう手助けします。

日本政府は、イエメンで最も脆弱な家庭の食料安全保障と栄養改善に向けたFAOの取り組みを支援しており、種子の配布はこの事業の一環として行われます。現在実施中の種子配布では、イエメン国内の5つの地域(ダーリウ県、ダマール県、タイズ県、アブヤン県、ライマ県)の脆弱な家庭9750世帯にマメ類、雑穀、モロコシの種子セットを届けています。

「支援を受ける家庭は、食料生産に加えて、将来の農期のための種子を自分たちで生産できるようになります。内戦の影響で生活や生計に大きな打撃を受けている国内の自給力が高まります」とFAOイエメン事務所代表のフセイン・ガダインは述べました。


雑穀とモロコシの価格の急

2019年6月に発表された市場モニタリング公報では、雑穀とモロコシの市場価格(前年同期比)はそれぞれ37%と23%上昇しました。主食の急激な価格上昇で、地域コミュニティの食料の入手が困難になっています。このプロジェクトは、地域コミュニティへの種子提供を通して、最も脆弱な家庭を対象に手が届かないほどの食料価格高騰をもたらしたインフレの影響を緩和することを目指しています。

FAOはこの2年間のプロジェクトで、コミュニティの動物保健や家畜生産制度の強化にも焦点を当てます。家畜飼料の配給や家畜に対する予防接種キャンペーンで、子どもや妊娠中の女性、授乳中の母親を主とした貧困家庭内で最も脆弱な人々が乳製品を入手できるようにします。

「日本政府の支援は、食料生産活動の向上や、地域コミュニティが土地や土壌、水資源の持続可能な管理を実施するための能力の強化に向けてのFAOの活動を可能にします。地域密着型の灌漑システムの導入や山間部の農耕地の再生活動はコミュニティの生計、農業生産性、そして食料安全保障と栄養を向上させます」とプロジェクトのチーフ・テクニカル・アドバイザーを務めるワリド・サレーは話しています。


農業投入材の配布は不可

最近発行された「早期警戒・早期行動四半期報告書」では、2018年時点でイエメン国内の1590万人が急性食料不安に苦しんでいると伝えています。これは世界で最も高い数値です。このプロジェクトのような人道支援活動がなければ、状況はさらに悪化していたと見られています。この報告書はまた、脆弱で極度の食料不安に陥る農家がこの農期を有利な状況で乗り切り、作物を増産するために、彼らに農業投入材を配給することを推奨しています。

食料と家畜の増産、収入源の多様化を促す生計プログラムを優先することで、紛争危機のさなかにあっても、FAOと日本の連携はイエメンの世帯に生計に必要な手段を提供できています。 

イエメンで内戦が勃発してからこれまでの4年間、国内の食料不安は継続して上昇しています。FAOはイエメンの緊急時生計対応計画(ELRP)をつくり、急性食料不安の低減や、2019年時点で700万人にも上るとされる脆弱な人々の生活を守ることを目指しています。


原文プレスリリースはこちらから(英語)
Thanks to Japan funding FAO is helping vulnerable families regain their agricultural productive capacity
http://www.fao.org/emergencies/fao-in-action/stories/stories-detail/en/c/1202874/ 

関連プレスリリースはこちらから
紛争下のイエメンで食料と栄養の安全保障を強化するため、日本政府が89100万円を拠出http://www.fao.org/japan/news/detail/en/c/1179465/