国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

リモートセンシング技術 シリアのFAO灌漑事業の影響評価に活用

2019/11/25

2018年3月、国連食糧農業機関(FAO)シリア事務所は、リモートセンシングという高度な情報通信技術を活用した最初の小麦・大麦生産評価を発表しました。 この評価は、シリア国内のリモートセンシング機関(GORS)によって実施されました。評価実施に際しては、FAOとGORS、シリアの2つの省(農業農業改革省と水資源省)の間で革新的なパートナーシップが形成され、引き続き優れた成果が生み出されています。

FAOは先日、GORSと自然農業政策センターにより実施された、農業生産への灌漑の影響を評価するためのリモートセンシング活用に関するワークショップを支援しました。ワークショップではケーススタディを教育ツールとして使用し、2つの研究事例を通して、ホムスとアレッポ両州の農業生産に対する灌漑システム修復の影響を測定しました。

このケーススタディでは、土地利用の変化を評価するために、灌漑施設の修復前後の画像を撮影したところ、FAO事業を通して行われた施設修復後の作物生産の改善が、両方の州で見られました。 異なるスペクトル範囲にわたるリモートセンシング技術の活用により、バイオマス生産における水利用効率をさまざまな側面から把握することで、多様な指標の計算が容易となりました。ワークショップでは、これらのツールの有用性について、説得力あるポスターも発表されました。

若手のシリア人技術者・専門家の約150人が、作物生産に対する灌漑プロジェクトの影響を評価するためのリモートセンシングの方法論とツールに関する集中トレーニングを受講しました。具体的な研修内容は、データ分析、リモートセンシングソフトウェアArcGISとERDAS IMAGINE、 正規化差植生指標(NDVI)や正規化水指数(NDWI)、総バイオマス水生産性および正規化バイオマス水生産などを含むさまざまな指数と画像による作付面積と作物生産の評価、 その他技術、革新の関連トピックでした。

FAOシリア代表のマイク・ロブソンは、リモートセンシング技術がシリアにとって重要であることを述べ、「この技術により、農業部門に関係する関係者は、個々の農家と話をするだけでなく、農業システム全体について結論を引き出すことができます。 また、たどり着くことが難しい地域や資金的に訪問が高くつく地域へのアクセスも可能にします」と話しました。加えて、「現時点での課題は、これらのアプローチを使用して、灌漑管理、作物の選択、さらには地域全体の植物の健康状態の評価についての現場での意思決定をサポートすることです。 この情報が現場レベルでのより良い意思決定に役立つ場合、農家がその便益を実際に享受するようになるでしょう」と続けました。

この研修は、FAO事業「シリアの専門家の長期的能力開発のための技術協力―全ての人に訓練を」の一環として、日本政府の寛大な支援を受けて行われました。この研修はまた、イノベーションと技術への投資を通じて農村コミュニティの持続可能な開発を促進するというFAOの目標と、国連の持続可能な開発目標(SDG)9 ―レジリエンスあるインフラの整備、包摂的で持続可能な産業化の推進、イノベーションの拡大― に沿ったものです。

原文プレスリリースはこちらから(英語)
Remote sensing technology assists experts in the Syrian Arab Republic assess the impact of FAO irrigation projects
http://www.fao.org/emergencies/fao-in-action/stories/stories-detail/en/c/1251947/