国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

新型コロナウイルス感染症 飢餓への長期的影響の軽減に経済刺激策を

2020/05/01

ローマ-新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の健康上の緊急事態に加えて不況が迫りくる中、国連食糧農業機関(FAO)が新たに発表した政策ブリーフ(Policy Brief)では、飢餓と安全保障への長期的な影響を和らげるために各国が早急に対策をとる必要性を伝えています。

世界経済の見通しは細部でそれぞれ違いが見られますが、すべてに共通して歴史的な景気後退が指摘されています。国際通貨基金(IMF)は、1月の予測では2020年の世界の国内総生産(GDP)は3.3%成長するとしていましたが、現在その数値はマイナス3.0%の縮小を予測しています。また大規模な景気後退は、4人に一人の栄養不足人口を抱えるサハラ以南アフリカでの四半世紀ぶりの全面的な不況から始まるとも予測されています。

FAOは2019年の「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」報告書で、77か国中65か国において、2011年から2017年の間の栄養不足の悪化が経済の減速と低迷に一部起因するという分析結果を出しました。

FAOによる政策ブリーフでは、1995年以降の食料供給の分析データを、FAOが統計開発してきた栄養不足蔓延率(PoU)指標にリンクさせ、さらに食料純輸入国の過去の経済動向と相関させた分析を報告しています。

また政策ブリーフは、適時の効果的な政策対応がとられなければ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にを引き金とする景気後退により、新たに何百万人もが飢餓に陥る可能性を指摘しています。 その数はGDPの縮小度合いに応じて、1 440万人から3 820万人、さらには、食料純輸入国101か国のGDP成長率が全体で10%ポイント減という非常に壊滅的な場合には、8 030万人となることも推計されています。

政策ブリーフは、食料へのアクセスにおける現在の不平等が悪化した場合、実際の結果はさらに悪いものとなる可能性があることを警告しています。政策ブリーフには、シナリオと方法論が含まれ、これらの側面をさらに詳しく説明するテクニカルノートが同時に公開されています。

FAO農業開発経済部 副部長マルコ・V・サンチェス・カンティージョは、「この政策ブリーフは、飢餓削減を新型コロナウイルス感染症対策への経済刺激策の優先事項とすべき証拠を提供しています」と述べています。

 

世界は食料不足には直面していません。FAOは、この健康危機において、すべての国が貿易フードサプライチェーンを滞りなく維持するために最善を尽くすよう、促しています。各国政府は、予測される経済成長への打撃に備えて、大規模な財政と金融対策を策定していますが、ここでの対応は健康的な食料へのアクセスの不平等という、多くの低・中所得国における長年の課題に取り組む機会となります。

現金や現物送金、フードシステムの主要アクターへの新たな融資枠、セーフティネット、所得支援、フードバンクなどの配給プログラムや学校給食プログラムの継続などの措置は、最も脆弱な人々、最貧困層を対象に実施されるべきです。政策ブリーフでは、そのような対象の絞り込みは、公共財政支出が需要をより強化し、また、人々が何年も続く慢性的に脆弱な依存関係に陥るのを防ぐ上での効果を最大化することも述べられています。

(略)

 

全文(英語)は以下から
COVID-19: Using economic stimulus to reduce the long-term hunger impact