国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

FAO事務局長 サバクトビバッタとの闘いは長引く

2020/05/22

ローマ-屈冬玉国連食糧農業機関(FAO)事務局長は、サヘル地域と南西アジアでのサバクトビバッタ被害への高まる懸念が、アフリカの角地域とイエメンで実施中の活動の負担を増大させていることを指摘し、バッタ制御への取り組みには時間がかかると警告しました。

FAOがサバクトビバッタへの緊急支援要請額を3億1 160万米ドルに引き上げたことを受けて、屈事務局長とマーク・ローコック人道問題担当国連事務次長 兼 緊急援助調整官は5月21日、FAO加盟国、地域機関、パートナー団体、その他の利害関係者向けの遠隔報告を開催しました。

「私たちは大きな成果を挙げてはいますが、この闘いは長く、新たな地域に広がりつつあります」と屈事務局長は述べ、 「まだ勝利を宣言できないことは明らかです。この規模でのバッタ大発生は、数か月で打ち負かされることはめったにありません」と続けました。

屈事務局長は、世界銀行グループがアフリカと中東諸国のサバクトビバッタ被害への対処を支援する5億米ドル規模のプログラムを設立したことを歓迎し、他のドナーやパートナー機関からのさらなる支援を求めました。

制御活動の実施にもかかわらず、最近の大雨は複数の国々でバッタの繁殖にとっての好条件を作り出しています。 農家が収穫を開始するちょうど6月には、幼虫が食欲旺盛な成虫になり、すでに厳しい食料安全保障状況を悪化させることとなります。

「サバクトビバッタは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響と相まって、生計と食料安全保障に危機的な結果をもたらす可能性があります」と屈事務局長は強調しました。

先日発表された「食料危機に関するグローバル報告書」は、2020年内に東アフリカで2 500万人以上、加えてイエメンでは1 700万人が急性飢餓を経験すると予測しています。 新型コロナウイルス感染症パンデミックは、食料安全保障をさらに弱体化させると想定されます。

FAOは今年1月、制御活動の拡大への支援を各国政府に即座に提供し、また10か国を対象として、バッタ大発生を抑え込み、生計と食料安全保障への壊滅的な影響を予想するための緊急支援要請を発表しています。

これまで実施された制御活動では、サバクトビバッタとその被害拡大を防ぐことによって、500万人を一年間養うに値する推定約72万トンの穀物を守ることができました。 加えて、牧畜農家35万世帯の生計への被害も防ぎました。

屈事務局長は、短期的な対応だけでなく、各国政府と地域機関が将来の発生を予測し、備え、防止する能力を構築する支援を行うための中長期的な行動が重要であると強調しました。

今後数か月の間には、サバクトビバッタはエチオピア、ケニア、ソマリアで繁殖を続けます。 6月に新たな群れを形成し、南スーダンからスーダンに移動、そして西アフリカのサヘル地域にリスクをもたらすと想定されます。

また、インドとパキスタンの国境の両側に沿ってリスクが高まっています。この地域では、イランとパキスタンでのサバクトビバッタの大群の発生が現在も続いています。

 

原文(英語)は以下から
FAO Director-General says the fight against Desert Locusts will take time, despite significant control gains(2020年5月22日)

 

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