国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

マダガスカルでの慢性的栄養不良への闘いに連携

2020/07/10

マダガスカル政府は、日本政府からの資金援助とマダガスカル国内で活動をする国連機関からの技術支援を受け、同国で栄養不良が最も深刻な地域の1つにおいて、慢性的栄養不良へのより良い解決に向けた分野横断的な共同プロジェクトを立ち上げました。

アンタナナリボーアモロニ・マニア地域圏での慢性的な栄養不良との闘いに向けた2年間のプロジェクトへの協定が、7月9日に署名されました。マダガスカル政府を代表する農業畜産水産省(MAEP)は、同国保健省(MSP)、水衛生省(MEAH)、教育省(MEN)、国立栄養局(ONN)との連携の下で署名、他方で、日本政府と独立行政法人国際協力機構(JICA)、そして国連機関からは国連食糧農業機関(FAO)が、国連世界食糧計画(WFP)や国連児童基金(UNICEF)などの他の国連専門機関との連携の下、署名を行いました。 

1億5 200万円(138万8508米ドル相当)のこの分野横断的なプロジェクトは、栄養のための国家行動計画(PNAN III)で掲げられている栄養不良との闘いという目的に沿って、栄養に配慮した介入、ガバナンスと発育阻害の削減のための広報・啓発に焦点を当てています。

このプロジェクトは、栄養に配慮した分野横断的で持続可能な介入を通じて、約2 500人の妊婦、2歳未満児5 000人、学齢期の子ども1 000人を含む、少なくとも5万人に到達します。これらには、栄養豊富な食料の利用可能性とアクセスを向上させ、学校レベルを含むアモロニマニア県の食料の質を改善すること、また、健康的な生活環境を保護および維持するための水と衛生(WASH)サービスの利用可能性とアクセスを改善することが含まれます。対象コミュニティの住民がきれいな水を消費することで、主に5歳未満児の下痢や発育阻害を防ぎ、対象コミュニティのレジリエンスを高めることを目指します。

慢性的栄養不良が最も深刻なアモロニ・マニア地域圏

アモロニ・マニア地域圏の5歳未満児の半数以上(55%)、6万人近くが発育不全であり、マダガスカル国内で最も深刻な地域の1つです。 この課題に対処するには、補完的な介入のパッケージにより栄養不良の複数の原因に取り組む、分野横断的なアプローチの実施が不可欠です。したがって、実施されるプロジェクトは、この地域で活動するJICAと世界銀行の投資を補完するものであり、子どもの成長と慢性的栄養不良の防止を最大限促進することを目指します。

多様なセクターに対応する共同介入は、同じ受益者を対象とし、第一に、栄養価の高い食料に重点を置き、多様でバランスの取れた食事を確保する、農業生産の多様化を行います。第2の介入は、強化米、つまり子どもたちの知的および身体的発達に欠かせない微量栄養素を導入し、学校に通う子どもたちの食事を確保することです。第三の介入は、健康で清潔な環境を保証する衛生インフラに関連し、飲料水を利用できるようにします。

進行中のイニシアチブ内での貢献

他の進行中の取り組み、特にJICAの「食と栄養改善改善プロジェクト(PASAN)」、「みんなの学校(TAFITA)」、「中央高地コメ生産性向上プロジェクト(PAPRIZ)」、および世界銀行の「マルチプログラムアプローチを用いた 栄養効果の改善(PARN)」と同様に、本プロジェクトは、2021年までに慢性的な栄養不良42%から38%に削減するという国家目標に資するものです。

国家の優先事項

栄養改善が貧困削減への国家の優先事項であることを考慮し、マダガスカルは栄養改善拡充イニチアチブ(SUN: Scaling Up Nutrition)に参加しており、2012年以来、栄養不良との闘いを強化しています。 さらに、マダガスカル共和国の大統領は、2019年8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)での「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)」のサイドイベントにおける演説で、栄養、教育、WASH活動を強化することにより、栄養不良との闘いへの政府の継続的な取り組みを意思表明しました 。

マダガスカルのルシアン・ラナリヴェル農業畜産水産大臣は、「日本は農業の成功に関して世界的に言及されている国の1つであり、食料安全保障と栄養分野で継続的な支援をいただいているマダガスカルの誇るべきパートナーです。この新しいプロジェクトへの署名は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を受けて困難な状況にある中で非常に時宜を得たものであり、住民の食料自給率を高め、タンパク質豊富な食品の消費拡大のために、国として積極的なプログラムを採用していきます」と述べました。

樋口義広・駐マダガスカル日本特命全権大使によると、「日本政府は農業、インフラ、教育、ヘルスケアを全面的に支援しています。」また、日本政府は、アフリカ各国政府に食料安全保障と栄養に配慮した政策とプログラムを実施するよう奨励することを目的としたIFNAと、専門知識や技術、日本の財政的支援により、2008年からアフリカの米生産を74%増加させることに成功した「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」の一発案者の1つです。

パトリス・タラ・タクカムFAOマダガスカル事務所代表は、「FAOの活動は、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる、食料不安と栄養不良への対策を強化するための政策と統合的プログラムの策定へのビジョンを完全に具体化するものです。このため、栄養プログラムではバリューチェーンアプローチを採用し、栄養改善の機会が農場から食卓に行き渡るようにしています。 これらは『栄養に配慮したバリューチェーン』、『栄養に配慮したバリューチェーンアプローチ』と呼ばれています」と強調しています。

(後略)

 

原文(フランス語)は以下から
Ensemble contre la malnutrition chronique dans la Région Amoron’i Mania