国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所

FAOと日本の協力:アフガニスタンの小規模農家の食料生産能力・生計向上を支援

2022/08/04

横浜 ― 8月4日、国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所の日比絵里子所長と国際協力機構(JICA)アフガニスタン事務所の天田聖所長は、アフガニスタンに対する日本政府による約1,400万米ドル(18.79億円)の無償資金協力「食料生産能力向上計画」に関する贈与契約に署名した。アフガニスタンでは、長引く干ばつ、深刻な経済危機、さらに6月の壊滅的な地震により、人々は深刻な被害を受けている。今回の新たな支援により、FAOはJICAと協力し、アフガニスタンの脆弱性の高い農村地域で、農業で生計を立てている人々への支援を拡大し、食料安全保障を強化を図る。

日比絵里子FAO駐日連絡事務所長は、日本政府及びJICAの支援や、FAOとの長年にわたる協力関係に謝意を表しつつ、「アフガニスタンでは国民の7割以上が農村地域で暮らしています。干ばつや経済危機が深刻化する中、農業や畜産業が大きな被害を受けており、アフガニスタンの人口の約半分が飢餓に直面しているといわれています。FAOは、特に脆弱な農村地域の人々を支援するため、最前線で活動しています。今般の日本からの追加的な支援により、アフガニスタンの脆弱な農村地域において、食料安全保障の確保及び栄養状態の改善に大きく貢献するとともに、灌漑施設の復旧を通して雇用を生み出すことができます」と述べた。

日本政府の支援を受け、FAOはJICAと協力しつつ、アフガニスタンの34県のうち11県において、食料を十分に確保できない55万人を超える人々に人道支援を行う。具体的には、農業や畜産業で生計を立てる小規模農家や土地を持たず農業関連の労働から収入を得る農民、女性や障がい者などが世帯主である家庭等、脆弱な人々を支援していく。

これら11県では、食料安全保障が確保されていないのが現状(2022年5月時点で、統合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification, IPC)分析のレベル 3以上)。直近のIPC調査によると、アフガニスタンの人口のほぼ半数に当たる約1,970万人が深刻な飢餓に直面しており、日常的に十分な食事がとれず、家畜、備蓄食料、その他生活をする上で必要な資産などを売らざるを得ない状況に追い込まれている。

リチャード・トレンチャードFAOアフガニスタン国別事務所長は、「日本は、特に灌漑の分野において、アフガニスタンでのFAOの活動を長年支援してくださっています。この非常に時宜を得た支援により、FAOは、最も脆弱で食料が十分確保できない農家や畜産農家の食料生産能力を向上し家畜を守ることができます。アフガニスタンの人々の食料安全保障を強化し栄養状態を改善するとともに、地域の農家に欠かせない小規模な灌漑施設の復旧に向けた支援が可能となることを、大変嬉しく思います」と語った。

岡田隆駐アフガニスタン日本国特命全権大使は、「アフガニスタン全土に及ぶ長期的かつ深刻な人道危機を踏まえ、この新たな支援が、地震による影響を受けたホースト県及びパクティカ県を含むアフガニスタンの農村地域に住む人々の食料安全保障の確保に大きく貢献することを期待します」と述べた。

 

農村地域の生計向上

今回の支援では、主に以下の4つの活動を行っていく。

1.     小規模農家の小麦及び春・夏作物の生産を支援するため、12万6千の脆弱な小規模農家を対象に、小麦及び春・夏作物栽培のための種子や肥料等を緊急支援パッケージとして配布し、技術研修を行う。また、小麦の種子だけではなく、とうもろこしや、緑豆・ひよこ豆などの高タンパクな豆類の種子も配布する。

2.     牧草地の劣化や干ばつ、伝染病の影響に加え、牧草地や水、これまで地元の市場から購入していた飼料、動物衛生用品・サービスへのアクセスが制約され、畜産農家が所有する家畜数が大きく減少していることから、畜産農家の家畜生産継続を図るため、7万の脆弱な畜産農家に対し、飼料や飼料用作物の種子、また家畜用医薬品等を含む緊急支援パッケージを配布し、技術研修を行う。

3.     食料の確保、栄養状態の改善、各世帯のレジリエンスを短期的に強化するため、特に女性など土地を所有せず食料生産のための資産が限られている14万超の脆弱な人々に対し、栄養価の高い食物を自家栽培するための支援パッケージを配布し、技術研修を行う。

4.     小規模灌漑施設の改修及び復旧支援を通じ、灌漑用水の利用、土壌や水の保全、気候変動へのレジリエンス強化を促進するとともに、農村地域に欠かせない小規模灌漑施設の復旧を通じ22万8,200人の雇用を創出し、地域住民の所得向上、地域経済の活性化を図る。各家庭では100米ドル相当の現地通貨(アフガニ)での収入が見込まれ、食料やその他の必需品の購入が可能となる。

 

関連リンク

  • FAO本部プレスリリース(英文)はこちら
  • 外務省報道発表はこちら
  • JICA報道発表はこちら
  • 統合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification, IPC)(英文)はこちら